京都府の中学校英語教師を対象にして開催された今年度のTOEICテスト結果についての問題が、昨日の毎日新聞電子版に掲載されました。このテストにおいて、TOEICの合格レベルとされている700点台に到達できたのは、受験した教師のわずか20%という結果でした。これは5名にひとりしか合格できないことになります。5年後に英語の大学受験内容が、より実務的なものに文部科学省の大学入試改革で改編されることが決まっている状況から、英語を教える先生の英語検定の合否結果が重視される傾向にあります。
中学の先生のTOEICスコアが低いことが、英語の先生としての資質の低さを示すものではありませんが、英語の指導内容の国際化に伴って、「使える英語」として教師自らが学習した上で英語の指導することが求められます。特に、コミュニケーション・ツールとして英語を考えた時にスピーキング技能やリスニング技能の強化に重点を置くことが求められます。近い将来、英語の先生になる条件としてTOEICなどの英語検定に合格していることが条件となる可能性があります。
ところで、高校留学に参加する生徒も、大学への進学ではTOEICなどの点数や、英語検定試験合否が大学受験に合格する条件になるので、できる限り早い時期から生きた英語をマスターする学習を開始して下さい。
京都府の中学英語教員、TOEIC合格がわずかで疑問も
(毎日新聞2017年2月11日 16時18分より)
京都府内の公立中学校(京都市を除く)の英語科教員を対象に、府教委は英語能力テストTOEICの受験を支援している。2016年度に約750万円の予算を組み、セミナーの受講費や受験料も負担した。一度で目標とする730点以上(英検準1級に相当)に達しなかった教員には2回目の「再試験」もあった。しかし、「合格」したのは対象者74人のうち16人。9日に結果を発表した府教委は「先生たちには本気になってもらいたい」と不満を漏らすが、専門家や現場からは懐疑的な声も上がっている。次期学習指導要領で、中学での授業を英語で教えることを検討していること、国が英語科教員に英検準1級程度の英語力を確保するよう呼び掛けていることを踏まえた。府教委は16年度、英語教育の基盤強化中心事業として、TOEIC受験の支援を打ち出した。50歳未満で英検準1級程度に達していない英語科教員約150人を対象にし、16年度は74人が参加した。
昨年6月のTOEIC試験では、4人が目標を達成。残る70人は、8~10月に民間業者による集中セミナーを3回受講するなどし、2回目のテストに臨んだ。最終的に計16人が目標を達成し、最高点は885点だった。しかし、58人は730点未満で、最低点は280点だった。58人には3回目の受験を課す。府教委学校教育課の立久井聡課長は「英語教員としての資質が問われかねない」と危機感をあらわにする。
一方、英語教育学専門の杉本義美・京都外国語大教授は「点数が高いから良い先生とは必ずしも言えない」と指摘する。TOEICはリスニングと読解の力を知るには有効と評価しているが、会話力は測れない。「英語で授業を教えるには相当なスピーキングと指導力が必要で、授業研修に一層力を入れる必要がある」と説く。
受験ムードに困惑している教員もいる。宇治市の中学校で英語を教える50代の男性は「現場には大きな負担」と説明する。男性は30代で英検準1級を取得。より良い授業をしたいと思う一方、英語指導以外の業務が多い。授業の準備に満足な時間が割けない教員も多いという。「英語力を上げるなら試験勉強ではなく、ネイティブスピーカーを囲み少人数で英語を学べるような機会を作ってほしい」と望んでいる。
府教委は教員の英語指導力向上を目的に、教員の研修や英検準1級受験の全額を補助しているが、ネイテイブスピーカーによる勉強会は開いていない。 TOEIC受験の支援事業は17年度も継続する予定で、新たに約70人が対象になる。立久井課長は「集中して勉強しないと点数は取れない。対象者がいる学校には、しっかり取り組める環境作りへの配慮をお願いしたい」と話している。